事例の背景
札幌市厚別区のご実家を相続することになったS様と、2人の弟様。3人は非常に仲が良く、「親の遺産なんだから、3人で仲良く3分の1ずつ持っておけばいいよね」と、すでに共有名義で登記する方針で話がまとまっていました。
しかし、S様がふと「将来、この家を壊して更地にして売るってなったら、3人のハンコが必要なんだよな……」と気づいたときに、一抹の不安がよぎりました。弟の一人は体調を崩しがちで、もう一人は海外赴任の噂もあります。もし誰かが認知症になったり、連絡が取れなくなったりしたら、この家は二度と動かせなくなるのではないか。
仲が良いからこそ、今のうちに白黒つけておくべきか。でも、自分一人が「名義をまとめよう」と言い出せば、弟たちに「独り占めする気か?」と疑われるのではないか。そんな葛藤で数ヶ月が過ぎ、結局何も進まないまま固定資産税の通知だけが届く状況に、強い焦りを感じるようになりました。
当事務所からのご提案
S様のご兄弟に対する「配慮」と「将来の不安」を同時に解決するため、以下の現実的な解決策を提案しました。
① 共有名義の「将来的なリスク」の講習会
いきなりS様から提案するのではなく、ご兄弟3人を集めて、私が「共有名義にすることの5年後、10年後のリスク」を客観的に解説しました。認知症問題や、次の代の相続(数次相続)が発生した際の複雑さを知ってもらうことで、全員が「あ、共有はやめたほうがいいね」と納得する土壌を作りました。
② 「単独名義+精算合意」のスキーム
家は長男であるS様が単独で相続し、その代わりに「将来その家を売ったときには、諸経費を引いた残りを3人で分ける」という内容を遺産分割協議書に盛り込むことを提案しました。これにより、今の管理はS様がスムーズに行え、利益は平等に分かち合うという、3人の理想を叶える形にしました。
③ 納得の根拠となる「清算式」の明文化
「将来いくら渡すか」を曖昧にせず、計算式を協議書の中に明記しました。これにより、数年後に売却価格が決まった際にも「兄さんがごまかしているのではないか」という疑念が生まれる余地をなくしました。
「仲が良いから大丈夫」が、相続においては一番危険な言葉です。プロとして、「仲が良い今だからこそ、将来揉めないためのルールを決めましょう」と背中を押させていただきました。
お客様の声
「平等に分ける」ということが、必ずしも「名前を並べることではない」と教えていただき、目から鱗でした。私から言うと角が立ちそうなことも、先生が図解を交えて説明してくれたので、弟たちも「なるほど、それは困るな」とすんなり理解してくれました。
今では、家をどう管理するかを、3人で前向きに相談できています。あの時、安易に共有名義にしてしまっていたらと思うと、本当にゾッとします。先の先まで見据えた提案をいただけて、本当にありがとうございました。