事例の背景
三笠市の山あいに建つ古い実家。お父様が亡くなり、長男のT様が管理を引き継ぎましたが、建物は急な斜面に張り付くように建っており、毎年の除雪や建物の歪みが深刻な問題となっていました。T様は「これ以上放置するのは危険だ」と早期の解体と売却を主張しましたが、札幌に住む妹様は「思い出の場所を壊すなんて忍びない」と感情的に反対。
しかし、妹様は一度も三笠の家の除雪を手伝ったことがなく、T様が一人で雪下ろし作業中に屋根から滑落しそうになった恐怖は伝わっていませんでした。話し合いのたびに「お兄ちゃんは冷たい」「お前は苦労を知らない」と罵り合いになり、ついには電話も繋がらない絶縁状態に。
「このまま冬を越せば、家が崩れて下の道路を塞いでしまうかもしれない」。その際の賠償責任が兄弟全員に及ぶことを危惧したT様は、法的なリスクを公平な立場で説明してくれるプロを頼ることにしました。
当事務所からのご提案
まずは、感情論に終止符を打つために「放置することの法的・経済的リスク」を明確にしました。
① 「特定空き家」指定のリスクと賠償責任のシミュレーション
三笠市の空き家対策条例や、斜面地特有の倒壊リスクを専門的な視点で分析。もし事故が起きた場合、妹様も数千万円規模の損害賠償を背負う可能性があることを、裁判例を交えて丁寧に説明しました。
次に、妹様の「思い出」を尊重しつつ、現実的な解決策を提示しました。
② 遺品整理と「メモリアル写真」の作成支援を条件とした解体同意
建物を壊すことへの心理的な抵抗を減らすため、プロの遺品整理業者と連携。大切な思い出の品を整理し、家の姿を写真に収めるプロセスを提案しました。その上で、解体費用を売却代金から差し引く「換価分割」の条項を協議書に盛り込みました。
最後に、斜面地という売れにくい土地を確実に処分するための体制を整えました。
③ 三笠の土地勘がある不動産業者との連携と登記
斜面地は一般的な不動産業者では敬遠されがちですが、地元の事情に強い業者を仲介。名義変更を最速で終わらせ、冬の積雪前に解体工事を完了させるためのタイトなスケジュールを管理し、全相続人の合意を取り付けました。
お客様の声
先生が妹に「思い出を守ることと、近隣に迷惑をかけることは別ですよ」とはっきり言ってくださったのが、解決への大きな転換点でした。私一人では、妹に憎まれ口を叩くことしかできませんでしたから。おかげさまで雪が本格化する前に更地にすることができ、妹とも最後は「これで良かったね」と涙を流して握手することができました。