ご相談の経緯
60代の長女の方からの、一人暮らしの父をめぐるご相談です。同じ南区の戸建てで暮らすお父様の物忘れが、少しずつ増えてきたとのことでした。
お父様は「体が弱ったら施設に入り、家は売って費用に充てたい」とお話しされていました。ところが、認知症が進むと自宅の売却自体ができなくなる場合があると知り、どう備えればよいか見当がつかない状況でした。
後に備えの対象となったのは、お父様が住む自宅の土地・建物と、施設費用に充てる予定の預貯金でした。ご家族は、お父様とご相談者、そして近くに住む弟様の構成です。仲は良いものの、誰が家の管理や将来の手続きを担うかは決まっていませんでした。
冬の雪かきや家の管理の負担もあり、ご自身で情報を集めてはみたものの、何から着手すればよいのか判断がつかずに手が止まっていたそうです。先の見えない不安を一度整理したいと、「札幌 家族信託」と検索して当事務所のページを見つけ、ご相談くださいました。
ご提案と対応
まず着眼したのは、お父様ご本人の意向と判断能力をその場で確認することでした。家族信託は、判断能力がしっかりしているうちに契約を結ぶ必要があるためです。そこでお父様・ご相談者・弟様の3人で札幌オフィスにお越しいただき、お話を伺いました。
将来に備える方法として、成年後見や任意後見との違いもあわせてご説明しました。後見制度は本人の財産保全が中心で、自宅の売却には家庭裁判所の判断が関わる場面があります。一方で家族信託は、受託者の判断で自宅を管理・売却できる点が、お父様のご希望に沿うと考えました。
採用したのは、公正証書信託契約の締結と信託登記です。これは、財産の管理を信頼できる家族に任せる契約を公正証書で作り、対象の不動産を信託の名義に変える手続きのことです。信託財産は南区のご自宅(土地・建物)と、施設費用に充てる預貯金の一部としました。
契約の中身は、お父様を委託者兼受益者、近くにお住まいのご相談者を受託者、弟様を予備の受託者とする構成です。受託者がご自宅を売却・賃貸できる権限と、その代金をお父様の生活費や施設費用に充てる目的を契約に明記しました。これにより、誰が何を担うかを書面ではっきりさせました。
契約書案を作成したうえで、公証役場で公正証書化し、法務局で信託登記の申請を進めました。信託専用口座については、開設先となる金融機関への事前の確認をご相談者にお願いし、開設までを一括でお手伝いしました。将来のご自宅売却や相続税が関わる場面に備え、不動産会社や税理士と連携できる体制もあわせてご案内しています。
結果
初回のご相談から約1ヶ月半で、お父様を委託者兼受益者とする公正証書の信託契約を結びました。その後およそ2週間で自宅の信託登記と信託専用口座の開設が終わり、備えの体制が整いました。
契約書には、受託者となったご相談者が自宅の管理状況を記録し、使った費用を明らかにする仕組みを盛り込みました。売却代金の使いみちをお父様の生活費と施設費用に限る点も、書面ではっきりさせています。
契約書案の作成から公証役場での公正証書化、法務局での信託登記の申請まで、一連の手続きは当事務所で代行しました。信託口座を開設する金融機関への事前確認はご相談者にお願いし、開設までを一括でお手伝いしたため、ご家族が平日に何度も窓口へ足を運ぶ負担は抑えられました。
お父様は今まで通りご自宅で暮らし続けながら、将来施設に入る際にはご相談者の判断で自宅を売却して費用に充てられるようになりました。きょうだいそれぞれの役割も契約で定まり、ご家族が同じ方向を向いて将来に向き合える状態になっています。
お客様の声
手続きを終えたご相談者から、次のようなお声をいただきました。
「父が元気なうちに決められて本当に良かったです。雪かきや家のことをこの先どうするのか、父と弟と3人で話す機会を先生が作ってくださったので、家族の気持ちがそろいました。」
将来への備えだけでなく、ご家族が同じ方向を向いて話し合えたことを喜んでいただけたのは、私たちにとっても何よりの励みです。
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