ご相談の経緯
50代・男性で神奈川県にお住まいの長男様からの、遠方の子と実家をめぐるご相談です。札幌市厚別区の戸建ての実家に、父親(80代)と母親(70代)が二人で暮らしていらっしゃいました。
ご両親は「いずれ施設に入る」と話しており、実家を売却して施設費用に充てる想定でした。実家は父親の名義で、父親は昨年軽い脳梗塞を経験され、母親も足腰が弱ってきていました。
長男様が不安に感じていたのは、父親が脳梗塞の再発などで判断できなくなった場合でした。所有者の判断能力が落ちると、実家の売却も預金の引き出しも進められなくなると知り、将来に備えて相談先を探していらっしゃいました。
きょうだいは札幌市内に住む妹様が一人で、長男様は妹様だけに負担が偏ることも気にされていました。神奈川から何度も札幌に通うのは難しく、遠方からでも進められる方法を探し、「札幌 家族信託 遠方」と検索して当事務所のページを見つけ、ご相談くださいました。
ご提案と対応
最初に整理したのは、実家の名義が父親お一人である点でした。所有者の判断能力が落ちた後は、売却も預貯金の手続きも本人でなければ進められなくなります。そこで「父親がしっかりしている今のうちに備えられること」を軸にご提案を組み立てました。
選択肢としては、成年後見制度と家族信託の両方をご説明しました。成年後見は判断能力が落ちてから家庭裁判所を通して始める仕組みで、居住用不動産の売却には裁判所の許可が必要になるなど、柔軟に動きにくい面があります。ご家族が「いずれ実家を売って施設費用に充てたい」という方針を早めに実現したい点を重視し、家族信託を中心にご提案しました。
家族信託とは、財産を信頼できる家族に託し、あらかじめ決めた目的に沿って管理・処分してもらう仕組みです。今回は父親を委託者兼受益者、母親を第二受益者、札幌にいらっしゃる妹様を受託者、神奈川の長男様を信託監督人とする設計をご提案しました。信託財産は厚別区の実家と、施設費用に充てる預貯金の一部としています。
設計のポイントは二つです。一つは、受託者である妹様が実家を売却し、その代金を両親様の施設費用に充てられる権限を契約に明記したこと。もう一つは、父親が亡くなった後も母親の生活費に使えるよう、受益者が続く形を盛り込んだことです。これにより、ご両親お二人の将来を一つの契約でカバーできます。
長男様には、信託監督人として受託者の管理を見守る役割を担っていただきました。妹様だけに負担が偏らない形にしたいというご希望に沿った配分です。契約書案の確認はメールとオンラインで進め、ご家族それぞれにご納得いただきながら内容を固めていきました。
手続きの面では、公証役場で契約を公正証書にし、法務局へ実家の信託登記を申請します。信託専用の口座開設も必要になるため、こうした一連の対応を当事務所と妹様で分担して進めました。公正証書化の日程は、長男様の帰省に合わせて調整しているところです。
結果
初回のオンライン相談から約3ヶ月で、公正証書による信託契約の締結まで完了しました。これにより、受託者となった妹様が実家を売却し、その代金を両親様の施設費用に充てられる体制が整いました。
契約では、父親が亡くなった後も母親の生活費に使えるよう、受益者が続く形を盛り込みました。公証役場で契約を公正証書にし、法務局へ実家の信託登記を申請して名義管理の根拠を明確にしました。あわせて信託専用の口座も開設し、両親様の財産と信託財産を分けて管理できるようにしています。
一連の手続きは、長男様の帰省2回に合わせて進めました。公正証書化の日程を帰省日に合わせ、法務局への登記申請と口座開設は当事務所と妹様で分担したため、長男様が何度も札幌に通う必要はありませんでした。契約書案の確認はメールとオンラインで進め、ご家族それぞれが内容に納得しながら完了まで至りました。
ご両親が施設に入る際は、妹様の判断で実家を売却し、その費用を両親様のために使える形になりました。長男様は神奈川から信託監督人として関わり続けられるため、妹様だけに負担が偏らない配分が実現しています。将来の不安を今のうちに一つの契約でカバーできたことで、ご家族の見通しが立ちました。
お客様の声
手続きを終えた長男様から、次のような言葉をいただきました。
「札幌に何度も行くのは現実的に無理だったので、オンラインで話を進めてもらえたのが本当に助かりました。妹に任せきりになる後ろめたさがあったのですが、自分にも役割ができて、兄妹で分担できた感じがしています。」
遠方にお住まいでも、連絡手段やご帰省の予定に合わせて進めることで、ご家族それぞれが納得しながら備えを整えられます。お一人に負担が偏らない形をご希望の方のお役に立てれば幸いです。