ご相談の経緯
40代・男性で愛知県にお住まいの次男様からの、遠方からの老親の資産管理をめぐるご相談です。札幌市で一人暮らしをされる80代のお父様のことを、離れて暮らす立場から心配されていました。
きっかけは、お父様が銀行のATMでの操作や振込を間違えることが増えてきたことでした。認知症で口座が凍結されると、施設の入居一時金や毎月の費用を父親のお金から払えなくなると聞き、どう備えればよいか分からないとのことでした。
後のご提案の前提となる財産は、札幌市中央区の分譲マンションと、まとまった額の預貯金です。お父様は持病で通院されていますが、判断能力はしっかりしており、ご自身の身の回りのことは自立してこなされている状況でした。
関係者はお父様と、札幌にお住まいの50代の兄様、そして愛知の次男様のごきょうだい2人です。兄様は札幌にいるものの仕事が忙しく、通帳管理を頼むのも気が引ける一方、次男様は遠方のため日常的に関わることが難しいという事情がありました。
次男様は、自分が遠方にいても父親のお金を父親のために使える仕組みを探しておられました。ただ、成年後見制度との違いが分からず、どちらが自分たちに合うのか判断がつかずにいたとのことです。
そこで「札幌 家族信託 遠方」と検索して当事務所のページを見つけ、ご相談くださいました。
ご提案と対応
まず着目したのは、「遠方にいても父親のお金を父親のために使えるか」という点でした。日常的に関われない次男様の立場と、仕事で忙しい兄様の事情の両方を踏まえ、無理なく回る仕組みを整えることを優先しました。
初回相談はオンラインで次男様と行い、成年後見制度と家族信託の違いを整理してご説明しました。家庭裁判所の関与の有無、お金の使い道の柔軟さ、費用の3点を並べ、どちらがご家族の希望に合うかを一緒に確認しました。
そのうえでご提案したのが、公正証書家族信託の組成です。家族信託とは、信頼できる家族に財産の管理や処分を任せる契約で、公正証書にすることで内容を確かな形で残せます。父親を委託者兼受益者、札幌の兄様を受託者、愛知の次男様を信託監督人とする設計をお示ししました。
信託財産は、施設費用と生活費に充てる預貯金の一部と、中央区の分譲マンションとしました。預貯金は信託専用口座に移し、受託者が医療費・施設費用・生活費を支払う目的を契約に明記。マンションは父親が住み続け、施設入所後は受託者が売却できる権限を定めました。
次男様の帰省に合わせ、父親・兄様・次男様に札幌オフィスへお越しいただき、父親の判断能力とご意向を確認しました。契約書案の確認はオンラインとメールで進め、公証役場での公正証書化を2回目の帰省日に実施しました。
その後、マンションの名義にかかわる信託登記は法務局への申請として当事務所が進め、信託口座の開設は受託者である兄様とともに手続きを進めました。愛知の次男様には、信託監督人として支出を確認できる体制づくりにご協力いただきました。
結果
初回のオンライン相談から約2ヶ月半、次男様の帰省2回で、公正証書による信託契約の締結、マンションの信託登記、信託口座への預貯金の移管が完了しました。父親を委託者兼受益者、兄様を受託者とする仕組みが、実際に動き出す形になりました。
契約書には、受託者が支払う対象を父親の医療費・施設費用・生活費と明記しました。あわせて、入出金の記録を残す帳簿の作成と、信託監督人である次男様へ定期的に状況を報告する取り決めも盛り込みました。お金の流れが後から確認できる形で固めています。
信託口座の開設や公証役場での手続き、法務局への登記申請といった一連の作業は、当事務所と兄様で進めました。次男様にお越しいただいたのは帰省に合わせた2回で、契約書案の確認はメールとオンラインで済ませ、遠方からでも大きな負担なく完了できました。
これにより、仮に父親の口座が凍結されても、兄様が信託口座から施設費用や生活費を支払える体制が整いました。愛知の次男様も、監督人として支出を確認できる立場になりました。離れて暮らすごきょうだい2人が、役割を分けて協力できる状態になっています。
お客様の声
手続きを終えたご相談者から、次のようなお言葉をいただきました。
「成年後見と家族信託の違いをオンラインで分かりやすく説明してもらえて、自分たちには信託が合っていると納得できました。」
「兄に通帳を預けるだけだとお互い気まずかったと思いますが、契約で役割をはっきりさせてもらえたので、兄弟で協力しやすくなりました。」
離れて暮らすご家族が、制度の違いに納得したうえで役割を分け、安心して協力できる形に進めていただけたことを、私たちもうれしく感じています。