事例の背景
「土地はたくさんあるのに、現金がなくて分けられないんです……」 石狩市で代々続く農家の長女、T様は途方に暮れていました。お父様が亡くなり、残されたのは広大な農地と築40年の自宅。札幌でサラリーマンをしているお兄様は「土地はいらないから、その分のお金が欲しい」と言いますが、農業収入で細々と暮らしてきたT様に、数千万円もの代償金を支払う余裕はありません。
T様は自分で計算しようとしましたが、農地の評価額は固定資産税評価額と実勢価格が大きく異なり、どこを基準に話し合えばいいのかすら分かりませんでした。お兄様からは「石狩の土地だって、これだけ広ければ価値があるはずだ」と詰め寄られ、幼い頃からの絆が崩れていく恐怖を感じていました。
冬になれば広大な敷地の除雪費や維持費もかさみます。「このままでは家も農地も手放すしかないのか」という焦りの中、農家の相続に詳しいプロの助言を求めて当事務所へ相談に来られました。
当事務所からのご提案
石狩市のような「面積は広いが換金性が低い」土地特有の課題に対し、以下の3点を柱に提案しました。
① 「利用価値」に基づいた適正評価の提示
単純な路線価だけでなく、農業振興地域などの法規制や、将来的な維持管理コスト(固定資産税や除雪費用)を差し引いた「真の資産価値」を算出しました。これをお兄様に提示することで、「ただ広いだけで、維持するだけでも負担が大きい」という現実を数字で理解していただきました。
② 一部売却と代償金の組み合わせ
すべての土地を守ることにこだわらず、維持管理が難しく、かつ売却の可能性がある一部の土地を分筆して売却し、その代金を兄妹で分けるプランを提案しました。これにより、T様は大切な母屋と主要な農地を守りつつ、お兄様への支払い原資を確保することができました。
③ 納税猶予と将来の二次相続を見据えたスキーム
農地の相続には、農業を引き継ぐ場合に適用される納税猶予制度があります。この要件を満たしつつ、将来T様に万が一のことがあった際に再び揉めないよう、お兄様の子世代まで見据えた「遺言書」の作成もセットで提案しました。
土地の広さは、時として「負債」にもなり得ます。専門家として、表面上の面積ではなく、その土地が家族にとってどう機能すべきかを整理し、無理のないロードマップを描きました。
お客様の声
先生が作ってくれた資料のおかげで、兄も「そんなに維持が大変だったのか」と納得してくれました。ただ「お金がない」と訴えるだけでは、きっと兄も『隠しているんじゃないか』と疑ったままでしょう。
石狩の広い土地をどう分けるかは、素人には本当に無理な話でした。一部を売却して現金を作るという発想も、税金の話を含めて丁寧に説明してもらえたので安心できました。おかげで今年も無事にこの家で冬を越せそうです。本当にありがとうございました。