事例の背景
長沼町のマオイ周辺で、長年多くの方に親しまれてきた農園。お父様が亡くなり、長男のS様が経営を引き継ぐことになりましたが、札幌で会社員をしている弟様から待ったがかかりました。近年の長沼の観光ブームを背景に、弟様は「これだけ人が集まる場所なら、土地を売れば相当な金額になるはずだ。自分の持ち分を現金で精算してほしい」と主張したのです。
S様にとって、この土地は単なる不動産ではなく、家族で築き上げた事業の基盤です。土地を切り売りすれば農園の運営は不可能になりますが、かといって弟様が納得するほどの多額の現金をすぐに用意することも困難でした。兄弟で話し合うたびに「経営の苦労を知らない」「兄さんは既得権にしがみついている」と、互いの立場を否定する言葉が飛び交い、心身ともに疲弊してしまいました。
このままでは農園の開園準備も進まず、お父様が守ってきた場所が閉鎖に追い込まれてしまう。事業と家族の両方を守るための「第三者の知恵」が必要だと考え、当事務所へ相談に来られました。
当事務所からのご提案
まずは、事業継続と相続人の権利保障を両立させる「攻め」の分割案を提示しました。
① 「事業用資産」としての適正評価と代償金の合意
農地を単なる宅地予備軍として評価するのではなく、農業経営から得られる収益をベースにした現実的な価値を算出しました。弟様に対し、安易な売却が難しい法的な制約を説明しつつ、S様が支払える上限額を代償金として提示し、双方が「これなら現実的だ」と思える落とし所を作りました。
次に、弟様が抱く「自分だけが損をするのではないか」という不信感を解消しました。
② 将来の「転用利益」に対する精算条項の挿入
もし将来、万が一農園を閉鎖して土地を売却・転用することになった場合には、その時点での利益を弟様にも分配するという特約を遺産分割協議書に盛り込みました。これにより、弟様は「将来のチャンス」を確保でき、S様は今の経営に集中できる環境を整えました。
最後に、経営者としての法的基盤を盤石にしました。
③ 農業用施設・機械の「一括承継」による権利整理
土地だけでなく、トラクターなどの農機具や売店施設の所有権もすべてS様に一本化。名義が曖昧なままだと将来の設備投資や融資で支障が出るため、一切の漏れがないよう遺産分割協議書に詳細に記載し、登記を完遂しました。
お客様の声
先生が「この農園が長沼にとってどれだけ大切か」という視点も踏まえて、弟に粘り強く話をしてくれたおかげで、最悪の事態を免れました。自分たちだけで話し合っていたら、きっと今頃は土地を切り売りして、農園も兄妹仲もバラバラになっていたと思います。おかげさまで、今年も無事にお客様を迎えることができました。本当にありがとうございました。