事例の背景
S様は、札幌市内の分譲マンションで一人暮らしをされています。数年前に夫を亡くし、お子様もいらっしゃらないため、身の回りのことはすべてご自身で管理されてきました。しかし、冬の路面凍結による転倒で入院した際、役所の手続きや入院費の支払いを遠方に住む甥に頼まざるを得ず、「この先、もっと判断力が落ちたらどうなるのか」と強い不安を感じたそうです。
特に気になっていたのは、将来もし自分が介護施設に入ることになった際、誰も自宅マンションを売却したり、預金を引き出したりできない「空白期間」が生まれることでした。成年後見制度も検討されましたが、「見ず知らずの専門家が選ばれるのは抵抗がある」「もっと柔軟に、自分の希望を反映させたい」という思いから、専門家を自力で探し始め、当事務所の門を叩かれました。
当事務所からのご提案
S.T様のケースでは、親族への負担を最小限に抑えつつ、S.T様が最期まで自分らしい生活を送れるよう、「死後事務」までを見据えた家族信託をご提案しました。
① 甥を「受託者」とする施設入所資金の確保
遠方の甥御様に、日常的な金銭管理まですべて押し付けるのは負担が大きすぎます。そこで、信託財産を「自宅マンション」と「将来の介護費用としての預金」に限定。S.T様の判断力が低下したタイミングで、甥御様がスムーズに自宅を売却し、その代金を施設入所費用に充てられる権限を付与しました。
② 指名型信託による「意思の凍結」の回避
単にお金を渡すのではなく、「どのような施設に入りたいか」「延命治療はどう考えるか」といったS.T様の価値観をあらかじめヒアリングし、付随する契約書に盛り込みました。これにより、甥御様が「叔母さんはどうしたかったんだろう」と迷わずに済む、心理的ハードルの低い仕組みを構築しました。
③ 専門家による「信託監督人」の常駐
「親族に財産を管理させるのは少し不安」という、お一人様特有の繊細な心理にも配慮しました。当事務所が信託監督人として就任し、甥御様が行う財産管理をチェック。透明性を確保することで、親族間でのトラブルを未然に防ぎ、S.T様が心から甥御様を信頼して任せられる環境を整えました。
お客様の声
最初は『一人身だから仕方ない』と諦めていましたが、信託という仕組みを知って霧が晴れたような気持ちです。先生は私の『わがまま』をじっくり聞いてくれて、甥にも負担がかからないよう丁寧に説明してくださいました。
これで冬の雪道を歩く不安も、将来の不安も消え、今は穏やかに趣味のサークルを楽しめています。もっと早く相談すればよかったです。