事例の背景
S様は、石狩湾新港近くに数棟のアパートを所有されています。近年、周辺の開発により入居率は安定していますが、建物自体の老朽化が進み、大規模な屋根の張り替えや外壁塗装が必要な時期に差し掛かっていました。しかし、S様は最近、大きな契約書の文字を読み解くことが難しくなり、業者との交渉に不安を感じるようになっていたそうです。
「もし修繕の契約を結ぶ前に自分が倒れてしまったら、建物はボロボロになり、入居者も出て行ってしまう。銀行からの借入返済も滞ってしまうのではないか」という不安が現実味を帯びてきました。自力で公正証書遺言を作成しようとしましたが、それでは「生きている間のトラブル」には対応できないことに気づき、経営者の視点でアドバイスをくれる専門家を探すようになりました。
当事務所からのご提案
アパート経営という「事業」を止めないための、実務に即した信託プランを提案しました。
① 賃貸経営の「意思決定権」の早期移転
建物の修繕、入居者との賃貸借契約、金融機関との折衝などの権限を受託者である長女様に集約しました。S様がお元気なうちは二人三脚で経営を行い、万が一S様の判断能力が低下した際には、長女様が単独で全ての経営判断を下せるようにすることで、経営の空白期間を作らない設計としました。
② 信託口口座によるキャッシュフローの「見える化」
アパートの賃料収入を管理するための専用口座(信託口口座)を開設。ここから修繕費やローンの返済、S様の生活費を捻出する仕組みを作りました。これにより、S様の固有財産と事業用資金を完全に分離し、将来の遺産分割協議においても「どの資金がアパート経営のものか」が明確になるように配慮しました。
③ 地元の業者・金融機関との連携サポート
単に契約書を作るだけでなく、S様が普段利用している石狩市内の金融機関や管理会社に対しても、当事務所から家族信託の仕組みを直接説明。長女様がスムーズに受託者としての業務を開始できるよう、実務上の「横のつながり」を固める提案を行いました。
お客様の声
自分がいなくなっても、アパートを大切に守り続けてほしいという私の想いを、先生がしっかり形にしてくれました。特に、実際に管理を引き継ぐ娘が戸惑わないよう、銀行や管理会社との調整まで動いてくださったのが本当に助かりました。これで、将来の修繕計画も安心して進められます。経営者仲間にもぜひ勧めたい納得の提案でした。